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CFD_関係者向け
2025/01/23

AI x Creators:Pushing Creative Abilities to the Next Level — 4つのステップで考えるAIと音楽クリエイションの関係|CFD-007:光藤祐基

AI x Creators:Pushing Creative Abilities to the Next Level — 4つのステップで考えるAIと音楽クリエイションの関係|CFD-007:光藤祐基 東京大学とソニーグループが共同で運営するCreative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、異なる領域を越えて未来の共創をリードする方々を迎える対話の場「Creative Futurists Dialogues」シリーズ(以下CFD)を展開しています。第7回目のゲストはSony AIのCorporate Distinguished Engineer、光藤祐基さんです。 光藤さんは、AIが音楽クリエイションにどのように活用されるかを四つのステップに分けて解説し、AIとクリエイターの関係について具体的な事例を交えながら紹介しました。また、クリエイターの表現力を引き上げるために必要な要素についてもレクチャーしていただきました。後半では、4ステップ全てを網羅したユースケースの紹介と、AIからクリエイターを守る方法について議論しました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Haruna Mori PHOTOGRAPH: Yasuaki…
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2025/01/07

アートの創作プロセスにおける外界・認知・身体の相互作用|CFD006(後編):高木紀久子(東京大学大学院)

アートの創作プロセスにおける外界・認知・身体の相互作用|CFD006(後編):高木紀久子(東京大学大学院) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第6回目のゲストは、美術家として活動後、認知科学・認知心理学領域へと進み、特に芸術家の創作プロセスと芸術創作の教育支援について実践的な研究に従事するという、越境的な経歴を持つ高木紀久子氏です。後半では、参加者らはフロッタージュとフレーミングのワークを通じて、環境に対する身体の使い方やものの見方について、アーティストの探索活動の体験から創作プロセスにおける認知の作用を実感してもらいました。前編はこちら。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 偶然の出会いを「類推」と「驚き」で活用する 目に見えないテクスチャを認知レベルで掴みとる 自己の探索とその作用に意識的になる 創造性プロセスの他領域への展開の可能性 偶然の出会いを「類推」と「驚き」で活用する高木紀久子(以下、高木):これから紹介する研究は、アーティストの篠原猛史さんによる「behind the scene アート創作の舞台裏」という東大の駒場博物館での展示の研究です。約11ヶ月にわたった発話のインタビュー結果、ドローイングの写真、写真を使ってアイデアを探索している様子を分析しました。 この展覧会は、彼がデュシャンの作品を観たいというところから始まっているのですが、会場は、デュシャンの代表作のひとつである『大ガラス』のレプリカがあるということで有名な美術館です。…
高木紀久子
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2025/01/07

認知科学でアートの創造プロセスを探究する|CFD006(前編):高木紀久子(東京大学大学院)

認知科学でアートの創造プロセスを探究する|CFD006(前編):高木紀久子(東京大学大学院) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第6回目のゲストは、美術家として活動後、認知科学・認知心理学領域へと進み、特に芸術家の創作プロセスと芸術創作の教育支援について実践的な研究に従事するという、越境的な経歴を持つ高木紀久子氏です。アートから情報デザイン、認知科学の道へとグラデーションで移り変わっていったその活動の変遷を、領域の時代背景とともにレクチャーしていただきました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 創作者から研究者へ。アートとサイエンスの認知学の変遷 社会、技術の進化とともに新しい知を創造する現代美術の複雑さ 熟達したアーティストはいかにコンセプトを設定しているのか ものを見るための目の構造と無意識のふるまい ものを見るための目の構造と無意識のふるまい筧康明(以下、筧):Creative Futurists Dialoguesの第6回目を始めます。お集まりいただきありがとうございます。今日のゲストは高木紀久子先生です。美術家でありながら、認知科学・認知心理学、創造性の研究者でもあり、芸術創造連携機構の特任助教も務めていらっしゃいます。今日はアーティストの創造プロセスについてお話しいただき、間にワークをしながらそのエッセンスをつかむようなものをご用意いただいています。対話の時間もあるので、皆さんも準備いただければと思います。高木さん、早速ですがよろしくお願いいたします。 高木紀久子(以下、高木):本日は皆様、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。お声掛けいただきました筧先生はじめ、また、このような場を設けていただいたCFIの皆様もどうもありがとうございます。今日の流れといたしましては、まず簡単に私のプロフィールをご紹介して、代表的な研究の話を二本ご説明します。その後、実際にアーティストの創作プロセスを体感するワークをして、その内容をお互いにシェアしてもらいます。最後に、全体のディスカッションをして、クロージングとさせていただきます。 今ご紹介いただいたように、私は認知科学の中では変わり者で、多摩美術大学の絵画科の油画専攻出身です。創作を通じて自分の手を動かしながら感じた概念を生成する過程に興味を持ちました。また、仕事を通じても、デジタル表現、例えばSIGGRAPHで調査をするなど、アートとサイエンスの合間の研究に関わり、人の認知へと興味関心が進みました。…
樋口恭介
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2024/12/20

マルチモーダルな技術社会で問う言語表現の彼方|CFD005(後編):樋口恭介(SF作家)

マルチモーダルな技術社会で問う言語表現の彼方|CFD005(後編):樋口恭介(SF作家) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第5回目は、SF作家の樋口恭介氏をゲストにお招きし、「大規模言語モデル(LLM)」や「マルチモーダル」といった近年急激に普及したキーワードを掲げ、参加型レクチャーが行われました。対話の後半では、人間視点から捉えられてきた認知を改めて広い視点から捉え直し、言語表現のもつ特性やその解釈が及ぼす他者との越境の可能性について言及されました。前編はこちら。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 視覚表現での意思疎通へ向かう“人間らしい”マルチモーダルAI AIの書く文章を人は見抜けるのか サウンドへ介在する言語的解釈 分散化した声がアンコントローラブルに重なり合う 視覚表現での意思疎通へ向かう“人間らしい”マルチモーダルAI 筧康明(以下、筧): マルチモーダルについて、皆さんが普段からどれくらい関心を持っているのか気になっています。僕はインターフェースの研究をしているので、音声や画像、映像、さらには触覚や香りまでもを操るために、マルチモーダルやクロスモーダルについて考えることが多いです。ただ、今立ち上がっているマルチモーダルに対する関心が、その延長線上にあるものなのか、それとも全く異なる新しい現象なのかを聞きたいです。 渡邉英徳(情報学環)(以下、渡邉): 僕自身の問題意識としては、LLM自身の精度向上へ行くよりも前に、マルチモーダルの方が優先事項として挙げられて、プロンプトをテキストで書くのではなく、画像や映像の処理の方が盛り上がっていることが興味深いと思っています。その上で、それがマルチモーダルとして、暗黙の共通理解が得られているという状況が面白いと感じます。つまり、LLMが本来持っている言語的な姿勢に対して、画像や映像も読み込めるということが全く別の問題として、ある種人間らしくこしらえられているというふうに見ることもできます。…
樋口恭介
CFD_関係者向け
2024/12/20

大規模言語モデル「LLM」と語らう、マルチモーダルな認知の世界|CFD005(前編):樋口恭介(SF作家)

マルチモーダルな技術社会で問う言語表現の彼方|CFD005(後編):樋口恭介(SF作家) 東京大学×ソニーグループによるCreative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する対話の場「Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)」を展開しています。第6回ではSF作家の樋口恭介氏を迎え、「大規模言語モデル(LLM)」や「マルチモーダル」といった近年急速に普及した概念をテーマに参加型レクチャーを実施しました。参加者とChatGPTを交えた対話では、多様な専門性を持つ人々が、マルチモーダルな言語交換の可能性と未来のスペキュレーションについて議論しました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: テキストのみならず画像や動画まで認識・生成するAIの深化 人間とAIの相対が浮き彫りにさせる認知の多様性 LLMを通じて考える動物や植物の認知世界 テキストのみならず画像や動画まで認識・生成するAIの深化筧康明(以下、筧):それではCreative Futurist Dialoguesの第6回を始めます。今日はゲストスピーカーとして樋口恭介さんにお越しいただきました。作家、編集者、コンサルタントであり、東京大学情報学環の客員准教授としても活動されています。今回のテーマは「マルチモーダル・スペキュレーション・認知の彼方」です。LLMやマルチモーダルの概念を軸に、多様な形で対話が進んでいく予定です。ぜひ皆さんも積極的にご参加ください。 樋口恭介(以下、樋口):樋口と申します。本日はよろしくお願いします。2時間という長丁場ですが、単なる講義ではなく、皆さんと対話をしながら進めたいと思います。飲み会のような雰囲気で、気軽に声をかけてください。 まず、面白いことがありました。筧先生とは今日が初対面ですが、偶然同じスニーカーを履いていました。そして、デモを行う予定だったPCが、先週の熊本出張の際に大雨の中を歩いていたら壊れてしまい、持参できませんでした。そのため、皆さんとの対話をメインに進めたいと思います。  …
CFD_関係者向け
2024/12/11

人類学の観察によるやわらかな思考実験とリフレーミング|CFD004(後編):中村寛(多摩美術大学教授)

人類学の観察によるやわらかな思考実験とリフレーミング|CFD004(後編):中村寛(多摩美術大学教授) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境して未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第4回目は、デザイン人類学者の中村寛氏(多摩美術大学リベラルアーツセンター/大学院教授)をゲストにお招きし、「デザインと人類学の共創」をテーマに据えたレクチャー&ワークが行われました。人類学、精神分析学、社会学など、さまざまな領域に影響を与えた学者のグレゴリー・ベイトソンの往年の授業をもとに、参加者は観察を通じた思考実験のプロセスとその意義を体感しました。前編はこちら。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: グレゴリー・ベイトソンの「カニの観察」の授業 具象と抽象の往復から見出す質的な比較の重要性 前提条件を取り払って問いを連鎖させる デザインは仕組みや仕掛けをつくること “いま”を見つめてきた人類学なら未来を描ける 「リフレーミング」の価値を伝えていくには グレゴリー・ベイトソンの「カニの観察」の授業 中村寛(以下、中村):まず、導入の体験として、観察に主眼を置くために「私たちは何をどのように見ているのか」という素朴な問いかけから始めてみたいと思います。そもそも「見る」というのはどういう経験なのかについても、後から振り返りたいと思います。フィールドの往路・復路があるとするならば、復路を疑似体験するというのが、これからやってみたいチャレンジです。この復路は「人類学者はフィールドでの経験をどのように振り返るのだろうか」という問いにも置き換えることができるかなと思います。裏に隠れたチャレンジとしては、「学際」や「越境」がこのCFDのテーマだと思うので、ディシプリンやバックグラウンドを超えた協業を、チーム内で擬似的に体験してみようというのが本日のワークの趣旨です。 「みる」というのは漢字で書くとたくさんのボキャブラリーが出てくると思います。観察の「観る」、診断の「診る」、視察の「視る」、看取る・看護の「看る」とか。英語でもそうですね。see,…
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2024/12/11

デザイン×人類学、異分野の並走の挑戦|CFD004(前編):中村寛(多摩美術大学教授)

デザイン×人類学、異分野の並走の挑戦|CFD004(前編):中村寛(多摩美術大学教授) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第4回目は、デザイン人類学者の中村寛氏(多摩美術大学リベラルアーツセンター/大学院教授)をゲストにお招きし、「デザインと人類学の共創」をテーマに据えたレクチャー&ワークが行われました。レクチャーでは、中村氏の人類学研究におけるフィールドワークの実体験や仕事の事例から、デザインと人類学の差異とそれらの関わり方の可能性について語られました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 人類学研究者から美術大学の講師へ 潜在する「暴力」を社会的背景から減らす デザインと人類学の「介入」のベクトル 人類学研究者から美術大学の講師へ中村寛(以下、中村):みなさん、こんにちは。本日はよろしくお願いします。私は中村寛と申します。タイトルは「デザイン人類学の挑戦」ということで、今日はデザイン人類学が一体どういうものなのかというレクチャーと、とある観察のワークをしていただきます。それから、CFD002では藤田結子先生がエスノグラフィーの回をやってくださったので、そこからどういうふうにリフレクションしていくのかを、後半にお話したいと思っています。 今日のメニューとしては、最初に私の方から簡単な自己紹介を20分ほどさせていただきます。その後、早速チーム分けをして、チーム内で自己紹介をしてもらいながら、簡易的なチームビルディングをしていただきたいと思います。その後、グレゴリー・ベイトソンという非常にキテレツで魅力的な探究をした人類学者がいるんですけれども、その人がやっていた授業を少し再現したいなと思っています。時間通り進めば、残りの時間で応用編をして、最後に質疑応答にしたいなと思います。まず私の自己紹介をしますと、「寛」という字を書いて「ゆたか」と読みます。今日は名前と顔だけでも覚えて帰っていただけたらと思います。普段は多摩美術大学で、リベラルアーツセンターという教養科目を扱うところにいます。美術大学は、基本的にそれぞれの専門分野に分かれていて、実技学科は縦割りに分かれているんですけれども、私の所属しているところでは唯一、ファインアートやデザインも含めて、分野の横串を刺しています。従来の大学は、共創が生まれないような仕組みになっているのですが、私のいる学科が起点となって、横断をしています。また、2年くらい前に自分で立ち上げた、人類学にベースを置くデザイン会社《アトリエ・アンソロポロジー Atelier Anthropology LLC.》の経営もしています。他には「KESIKI」というカルチャーデザインファームにもジョインさせてもらっていて、主にリサーチやインサイトデザインを担当しています。 もともとは、一橋大学にある「Institute…
Vali Lalioti
CFD_関係者向けイベントレポート
2024/12/10

パーソナリティからデザインする人間とロボットの協働|CFD003(後編):Vali Lalioti(ロンドン芸術大学教授)

パーソナリティからデザインする人間とロボットの協働|CFD003(後編):Vali Lalioti(ロンドン芸術大学教授) 批評と創造をつなぎ未来を共創する、東京大学×ソニーグループによる連携講座「Creative Futurists Initiative」から派生した、越境しながら活躍するゲストを迎える対話の場「Creative Futurists Dialog」。第3回目のゲストは、ロンドン芸術大学からXRとロボティクス研究に取り組み、およそ30年にわたってクリエイティブとテクノロジーを掛け合わせた活動を生み出してきたVali Lalioti教授。カードを使って自分の強みを表す言葉を認識した後は、グループごとの特性に合った性格をもつロボットを表現するワークを通じて、異分野の人々がともにデザインに取り組むための土壌づくりを体験した。前編はこちら。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 多様性のあるチームがイノベーションをつくる 性格を身体性を伴う動きで表現する ロボットならではの個性を楽しむ 異なる強みの結集がインクルーシブなデザインづくりへ アート×テクノロジーの異分野を越境する提案とは 多様性のあるチームがイノベーションをつくるVali Lalioti(以下、Vali):みなさんには、チームの強みに合ったロボットの特徴を5つ選んでもらいました。このエクササイズが実際のロボット開発にどのように役立っているのでしょうか。これは、サイモンというロボットです。グローバルIT企業のIBMによって開発され、宇宙ステーションで初めて使用されました。サイモンは宇宙飛行士の性格に合わせた個性を持つように設計されています。例えば、サイモンとは「どんな音楽が好きですか?」などの会話をすることができ、宇宙飛行士との生活を豊かにしました。…
Vali Lalioti
CFD_関係者向けイベントレポート記事_ピックアップ
2024/12/10

アート×テクノロジーでロボットの設計方法をデザインする|CFD003(前編):Vali Lalioti(ロンドン芸術大学教授)

アート×テクノロジーでロボットの設計方法をデザインする|CFD003(前編):Vali Lalioti(ロンドン芸術大学教授) 批評と創造をつなぎ未来を共創する、東京大学×ソニーグループによる連携講座「Creative Futurists Initiative」から派生した、越境先駆的なゲストを迎える対話の場「Creative Futurists Dialog」。第3回目はロンドン芸術大学からXRとロボティクス研究に取り組み、およそ30年にわたってクリエイティブとテクノロジーを掛け合わせた活動を生み出してきたVali Lalioti教授を迎え、教育やビジネスなど、さまざまなコラボレーターとともに広義のデザインを駆動してきたプロジェクトの数々をご紹介いただきました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 多様なバックグラウンドをもつ、世界のイノベーションの火付け役 「クリエイティブ・コンピューティング」の越境的研究とは 誰もがピカソのような創造性を持っている ロボットのデザインを通じてアート思考を実践に持ち込む方法 機能からではなくパーソナリティから考える 多様なバックグラウンドをもつ、世界のイノベーションの火付け役筧康明(以下、筧):皆さん、今日はご参加いただきありがとうございます。この「Creative Futurists…
CFD_関係者向け
2024/06/07

誰でもできるエスノグラフィーのはじめかた|CFD002(後編):藤田結子(大学院情報学環准教授)

誰でもできるエスノグラフィーのはじめかた|CFD002(後編):藤田結子(大学院情報学環准教授) 東京大学×ソニーグループ株式会社による「越境的未来共創社会連携講座」(通称 Creative Futurists Initiative:CFI)から生まれた新企画「Creative Futurists Dialogues」。第二回目となる今回のテーマは「現代エスノグラフィー」。ゲスト講師として情報学環から藤田結子准教授を迎え、エスノグラフィーの実践ワークショップを行った。メモの取り方、メモをもとにつくるフィールドノートという資料を作るための具体的な手順とポイントについて、実践とフィードバックを通じてレクチャーされ、今後のCFIの研究活動にもつながる方法論が共有された。前編はこちら。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 主観と客観は明確に分ける。正確なメモをつくる方法とは ある一つの出来事でも、調査者によって異なる物語が残る 現場の再現性を高めるデータをつくるポイント 主観と客観は明確に分ける。正確なメモをつくる方法とは藤田結子(以下、藤田):今日はさわりだけですが、エスノグラフィーの学術における期間を設定するための理論的方法は、明らかにしたいことについて十分なデータが集まり、もうこれ以上新しいことは出てこないだろう、と思ったら終了になります。なので1年以上必要と言われることが多くて、5年、10年の調査もたくさんあるんです。だけれども、ビジネスなどが関わってくると、予算や期限のために調査期間は1日から数週間と比較的短くなってしまいます。その中でできる範囲でやらなければならない時に、どうやるのか? ということを見ていきましょう。まず最初に、現場に入る(エントリする)というのはすごく難しいんですね。みんな苦労するんですけれども、入って調査していいという許可を得ることがすごく難しい。なぜなら、知らない人が自分のフィールドにやってきて観察されるというのは、少し思うところがありますよね。ですが企業がやる場合は、お金を払ったりすることもできるので、エントリしやすい側面もあるのかなと思います。   次に、参与観察を行ってメモをとった後に、家やカフェでもう一度フィールドノートを書き上げるという作業をします。色々な実験でデータというものは取られていますが、エスノグラフィーにおいては、これこそがデータになるんですね。ある程度データがたまったら、そこからフォーマル・インタビューでさらに聞きたいことを聞いていきます。その後の5番目が抜けがちなものだと思うんですけれども、ある程度たまったフィールドノートを、データとしてコーディング等を用いながら分析します。データ分析には色々な方法、ソフトウェアがあるんですけれども、すごく細かくコーディングをして、データから叩き上げるような流派もあれば、テキストを繰り返し読んで理解しようというタイプの人もいます。それは研究にもよりますが、色々なタイプがあって、メリット、デメリットについて色々な議論があります。今日の実践ではデータ分析はやりませんが、最後の手順としてはそれを元に報告書、レポートを書くということですね。今日は手順の2番目と3番目を実際にやってみたいと思います。フィールドワークの現場では、まずメモを取り、そのメモをもとにフィールドノートを作ります。あとは、インタビューの書き起こしや、他にもよくあるのはフィールドワークに関して事実とは別に、自分自身が感じたことについて日記を書くというものがあります。なぜなら、その事実と自分の主観を切り分けられる前提、つまり「客観性」の担保がもとになるということです。そうでなくても、自分が見たものと自分の判断とを分けることができます。では、ここからボランティアのお二人に来てもらって、お話をしたり、遊んだりしてもらいます。その様子を皆さんで観察して、メモをとります。メモは文章ではなく、箇条書きで良いです。他にはスケッチやデッサンも良いと思います。後でそれを見て、より詳しいフィールドノートのレポートを書くときのことを思い浮かべてください。そして、人間というのは常にメモを取っていないと、さっき言ったばかりのことですら忘れてしまうものなので、とにかく全部メモを取ることが必要です。ヒントとなる単語でも良いです。 このような教室ではメモを取りやすいですが、メモを書きにくい現場、例えばクラブでエスノグラフィーを行う時に、みんなが踊っている中ではなかなかメモはできない。そういう時はトイレとかに行ってこっそり書く。本当にそう思います。それを研究者たちは真面目に議論しているんです。メモはすごく重要で、そこまでして、この現場で起こった相互行為や振る舞い、会話について、詳細を書き留める時間がないので、後で思い出すためのヒントとして書いていくんです。…