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大きな理念につきましては、今筧先生からとても丁寧に説明いただきましたので、実際に既に走り出しているプロジェクトについて説明をさせていただきたいと思います。私、今ご紹介いただきました東京大学大学院情報学環の田中東子と申します。

まだ東大に来て2年目です。長年、女子大学で、どちらかというと中規模の学校でグループワークをしながらの教育や、アクティブラーニングなどを数多く行い、今はこちらでまた少し違った形で教育活動に携わらせていただいております。

私たちが既に始めている「テック✖バイアスプロジェクト」というものがありますので、今日はこちらのお話を簡単にさせていただきたいと思います。プロジェクト概要としましては、テクノロジーの開発時、実装の際にブラインドスポットとなりうるバイアスについて、特に初年度はジェンダーやセクシュアリティといった観点から様々な専門分野の参加者が文理融合の多様な視点から検証し、その改善や解決に向けて具体的な制作物を共創することを通じ、あるべき未来を具体的に構想してみるというプロジェクトです。

人文学の学生、社会学の学生、社会科学の学生、理工系の学生、そしてソニーの社員の方も一緒にグループとしてこのプロジェクトに参画していただけます。プロジェクトのプロセスでは、例えば対話・討論をする時には、喧嘩するようなこともあるかもしれないし、考えが一致せず、矛盾を引き起こすようなこともあるかもしれません。そして、制作のプロセス、それらすべてを記録し、エスノグラフィー調査の対象とし、多様な集団が協働するときに何が起こり、何が問題となり、それらがどのように解決される、もしくは解決されないまま放置されていくのか。そういったことを分析の対象にしていく形でプロジェクトを進めています。

そして、社会学や人類学的なフィールドワークを経験したことがある人は、今回のプロジェクトを通じてデザインや制作の手法を学び、逆にデザインや工学の経験者はフィールドワークの手法をともに学んでいこうと、現在は相互交流を深めているところです。そして最終的な成果物として考えているところにお話が移りますが、まずはテック✖バイアスに関する課題解決型のデザインや制作物です。こういったものを作成しまして、国内外の展示会などにも出すことを目標に、現在取り組んでおります。

それから物理的な制作物ではありませんが、価値観や教育上の取り組みとしては、システム領域への多様な価値観の導入と埋め込みというものを、プロジェクトを通じてどのように行っていくことができるか、ということを考えてみたいと思っています。そして、企業・産業的な視点と学術的視点を融合させ、対峙しながら、どのように課題や問題に取り組んでいけるのか、ということも考えていきたいと思います。そして調査分析型の課題解決方法と、デザイン思考を融合させた新しい教育スタイルというものを、プロジェクトを通じて方法論的に抽出し、今後の情報学環や、ソニーの社員の方の教育活動などに応用していくというようなことを考えています。

初回も既にグループワークを行っており、『ラボラトリーライフ』という社会学の研究者が理系の実験室に入り込み、そこで何が起きているかをフィールドワークした、世界的に有名な本を読みました。こういった本を読みながら、理系・文系、学生・社会人の方、日本人の学生、留学生ほかさまざまな属性の方々がディスカッションをしていくということを進めております。

あとは参考資料になるので、また後で詳しく話しますが、非常にメンバーが多様であるということ。とても楽しそうに、学生さんが、そしてソニーの方が参加してくださっています。またこの先、どんなふうに進めていくかは、この後のパネルディスカッションなどを通じ、もう少し詳しく説明させていただければと思います。

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