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Tech Biasインタビュー
2025/01/27

差異を並べて味わう《私たちを計量しないために》《バイアス推理カード》|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー

差異を並べて味わう《私たちを計量しないために》《バイアス推理カード》|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー 東京大学とソニーグループ株式会社による「越境的未来共創社会連携講座(通称:Creative Futurists Initiative、以下CFI)」では、8ヶ月間にわたる講座内の実践研究プロジェクトの成果発表として、2024年11月23~25日の3日間、東京大学本郷キャンパスにおいて「Tech Bias —テクノロジーはバイアスを解決できるのか?」展を開催。出展した4グループのみなさんにインタビューを行ないました。今回は、身近な製品設計にも関わる「標準的身体」と「計量(数字で扱うこと)」について捉え直す《私たちを計量しないために》と、バイアスについてオープンに語らうコミュニケーションの仕組みを作る《バイアス推理カード》についてお話を伺いました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: KAORI NISHIDA PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 標準の大きさ・形とは何かを疑ってみる 手にまつわる記憶から自分の個性を見つめる ゲームでテクノロジーに潜むバイアスを考察する 標準の大きさ・形とは何かを疑ってみるこちらの作品のテーマは「標準的身体」です。ある製品において想定される「人間の手はこれくらいの大きさや形である」という設定に対して、それがいかにして標準的と言えるのか? という問いを立てました。推論ですが、世界の製品の多くは、おそらく西洋の成人男性の健常者が基準になっていると思います。しかし、西洋の成人男性の健常者の中にもばらつきがありますよね。 ピアノを例に挙げると、1オクターブの幅が165.5mmに規格化されていますが、手の小さい方では、指が届きにくいため弾くことが困難です。メンバーの一人は以前ピアノを習っていたけれど、先生から「手が小さいから無理」と言われて辞めてしまったそうです。しかし、実は音階を保つために、鍵盤のサイズなどの構造が関係しているわけではないんです。ピアノの設計は、長い歴史を持っていて格式高いということも、この規格を固定化してしまっている一つの要因として挙げられると思います。それが今に至るまで、何となく当たり前として受け入れられてきて、意識されてこなかったのかもしれません。モーツァルトら著名な作曲家たちがどんな体格だったのかは正確には分かりませんが、過去の演奏者の多くが男性だったという背景も関係し、ピアノの設計にも西洋の成人男性の平均的な体格が影響しているのではないでしょうか。さらには、ピアノを嗜むことが格式や教養を示すものであり、それが男性に偏っていたのではないかということも推測できます。 また、会場には五本指の軍手も例として掲示しました。3Dプリンターで「手尺1尺=約30.3cm=標準」と設定した手の模型を作成し、そこに軍手をはめてみました。今回展示をしてみて、来場者の方との会話の中で、この形が必ずしも全ての人に合うわけではないことに改めて気づかされました。「指が短いから、手袋をはめると先端が余ってしまい、その瞬間に自分の手が標準とは違うのだと感じる」という話も伺いました。特に指の長さや形状、手の大きさによってはフィットしない場合があります。そもそも五本指を標準とすることについても再考する余地があるように思います。また、今回作成した模型は関節が曲がらないため、これに軍手をはめようとすると非常に難しいことにも気づき、人間の手の動きの自由度や柔軟性についても、当たり前ではないと再認識させられました。 さらに「手袋や衣服の標準は地域や文化によって異なるのではないか」という指摘もありました。今回の展示を通じて、そうした多様性や個々の身体に合わせた製品設計の必要性を実感することができました。これは、身近な道具の設計にも通ずる部分があると思います。多くの人にとって「標準的」とされるサイズで作られているものでも、実際には身体のパーツが大きい人や小さい人、子どもや高齢者にとっては、その設計が負担になってしまうこともあります。まずは「標準」を疑ってみる視点が、私たちの生活をより良くするきっかけになるのではないでしょうか。…
Tech Biasインタビュー
2025/01/27

生成AI×動物×プリクラから表象を再考する《ジェンダライズプリマル:動物鏡像儀式》:『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー

生成AI×動物×プリクラから表象を再考する《ジェンダライズプリマル:動物鏡像儀式》:『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー 東京大学とソニーグループ株式会社による「越境的未来共創社会連携講座(通称:Creative Futurists Initiative、以下CFI)」では、8ヶ月間にわたる講座内の実践研究プロジェクトの成果発表として、2024年11月23~25日の3日間、東京大学本郷キャンパスにおいて「Tech Bias —テクノロジーはバイアスを解決できるのか?」展を開催。出展した4グループのみなさんにインタビューを行ないました。今回は、プリクラという媒介を通じて、私たちが無意識のうちに認識している動物表象の問題について議論の場を創出する《ジェンダライズプリマル:動物鏡像儀式》についてお話を伺いました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: KAORI NISHIDA PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: どんな動物になりたい? 文化やメディアによって形成される動物のイメージ 生成AIの不確実性も問題提起に活用 どんな動物になりたい?ーーまずは、今回の作品について教えてください。この作品は、動物に関するジェンダーバイアスをテーマとした「動物になれるプリント機」です。なぜこのようなものを作ったのかというと、「動物表象」に関する問題意識が出発点となっています。動物表象とは、例えば「狼男」や「鶴の恩返し」「犬のお巡りさん」などの物語や童謡、あるいは「ライオンキング」のシンバや「美女と野獣」のビーストなどのキャラクターのような、動物を使った表現全般を指します。これらは物語や商用コンテンツのキャラクターにとって重要な要素ですが、一方で固定のジェンダー観を作り上げる要因にもなっているのではないかと考えています。 例えば、「狼=強い男性」「うさぎ=かわいい女性」といったイメージは、すべて人間が作り上げた物語の産物です。このような表象が、メディアを通じて無意識に再生産されていることが課題だと感じています。そのため、生成AIを活用して「動物になれるプリント機」を作り、これを通じてジェンダーバイアスや動物表象について考えるきっかけを提供したいと思いました。 このプリント機を使うことで全ての問題が解決するわけではありませんが、生成された写真を観察したり、自分が選んだ動物に投影されたイメージを体感したりすることで、新たな議論や気づきが生まれることを期待しています。そして、「なぜ自分はこの動物を選んだのか」「この動物の姿に何を感じるのか」などの問いが生まれたらいいなと考えています。実際に来場者の体験の様子を見ると、動物を選ぶ段階から既にジェンダーバイアスが表れていることが分かります。例えば、うさぎや猫を選ぶ人の多くが女性で、そこには「かわいく撮られたい」という意識が根底にあるようです。 女性的に捉えられがちなウサギや猫、男性的に捉えられがちな狼やライオンにも雌雄があるため、種によってジェンダーを特徴づけるような表現自体が動物への敬意に欠くことなのかもしれません。捉え方の視野を広げると、動物への接し方が変わると思っています。人と動物との関係性を改めて見つめ直すことで、動物を用いた新しく多様な表現がこれから育まれると良いですね。文化やメディアによって形成される動物のイメージ今回私たちは、動物表象とジェンダーに関する調査アンケートも行いました。動物は、古今東西、ギリシャ神話から、ヨーロッパの神王伝説、中国や日本の民話に至るまで、しばしば物語の中で表象の記号として使用され、人間社会の文化に重用されてきました。つまり、動物は自らを語っているのではなく、人間社会を語っているということです。人間社会を語る動物表象は、どのように作られているのでしょうか。例えば、生活の中で人間と動物表象が結びつけられたメディアコンテンツがあります。アニメや漫画、ドキュメンタリーの中で、動物と人間の結びつけ方は、ジェンダーを中心にどう固定されてきたのでしょうか。結論としては、動物が使用される表現においては、ノンバイナリーなものが最も多いです。次に男性的、最後に女性的な表現の順で多く用いられます。そして、女性的な表象で用いられる動物の種はかなり集中していることがわかりました。うさぎなどの小動物がしなやかで柔らかく女性的と見られるのに対し、オオカミやライオンなどの力強いイメージの動物は男性的に表象されることが多いです。中でも興味深い例は、猫です。猫は一般的に室内で過ごし、外にあまり出ないことで知られていますが、その特徴が女性的な表象へ反映されることが多いです。このことから、ジェンダーに関する社会的役割のステレオタイプが、動物表象にも反映されていると考えられます。 一方で、ノンバイナリーの表象に使われる動物は、海洋など多様な環境に生息していて固定のイメージに捉われません。例えば、クラゲやイルカ、ペンギン、コウモリなどです。また、同じ動物の中でも、その年代や種別によって表象が異なる場合もあります。例えば、同じ犬でもドーベルマンやプードルでは異なる表象があったり、馬についても男性的なイメージがある一方で「マイリトルポニー」の少女の象徴や、男性騎手との異性愛的なパートナーとして捉えられる場合には、「ウマ娘」のように女性化された表象も存在します。…
Tech Biasインタビュー
2025/01/25

多様なコミュニケーションのズレを提起する《聴こえないのは誰なのか?》|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー

多様なコミュニケーションのズレを提起する《聴こえないのは誰なのか?》|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー 東京大学とソニーグループ株式会社による「越境的未来共創社会連携講座(通称:Creative Futurists Initiative、以下CFI)」では、8ヶ月間にわたる講座内の実践研究プロジェクトの成果発表として、2024年11月23~25日の3日間、東京大学本郷キャンパスにおいて「Tech Bias —テクノロジーはバイアスを解決できるのか?」展を開催。出展した4グループのみなさんにインタビューを行ないました。今回は、4つのプレゼンテーションを通じて、見落とされがちな「声」や、環境の違いによって起こる誤認識に目を向けた作品《聴こえないのは誰なのか?》について、お話を伺いました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: KAORI NISHIDA PRODUCTION: VOLOCITEE Inc. ※本作品については制作者のコンセプト・意図により障害表記としています目次: リモート会議のツールに潜む誤変換 同じ音にも複数の解釈がある 当事者とは誰か? 社会モデルの考え方 テクノロジーの規範に詩で抵抗する 包括的に問いをひらくためのマニフェスト リモート会議のツールに潜む誤変換ーーまずは、この作品を作ったきっかけを教えてください。現代社会では、テクノロジーが便利である一方で、障害(※)を作り出してしまう部分もあるのではないでしょうか。もの作りにおいて、健全な人の体が前提とされることが多いため、障害のある人に対してフレンドリーでない面があり、その障害をさらに助長してしまっていると思います。障害のある人たち自身で対処する方法もありますが、本来は社会全体で取り組むべきではないか、という問題提起をしていくことが必要だと考えています。…
Tech Biasインタビュー
2025/01/24

WebサイトのジェンダーバイアスをAIが評価する《 scored?》|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー

WebサイトのジェンダーバイアスをAIが評価する《 scored?》|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』:インタビュー 東京大学とソニーグループ株式会社による「越境的未来共創社会連携講座(通称:Creative Futurists Initiative、以下CFI)」では、8ヶ月間にわたる講座内の実践研究プロジェクトの成果発表として、2024年11月23~25日の3日間、東京大学本郷キャンパスにおいて「Tech Bias —テクノロジーはバイアスを解決できるのか?」展を開催。出展した4グループのみなさんにインタビューを行ないました。今回は、Webサイトの女/男らしさについてAIに評価させ、そのデータを分析を通じてAIのバイアスを考察しながら、私たちの中に潜む固定観念についても再認識を生むような作品《 scored?》について、お話を伺いました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Kaori Nishida PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 700のWebサイトに潜むバイアスを3種のLLMが解析 AIにもバイアスはある 一覧データが浮き彫りにするそれぞれの違和感 700のWebサイトに潜むバイアスを3種のLLMが解析この作品は、Webサイトの女/男らしさについてAIに評価させ、一覧化することで、そこに内包されたテクノロジーが内包するジェンダーバイアスを視覚化させるという作品です。人類のアウトプットの集積であるAIの評価を分析を通じて、ジェンダー表象のあり方を再考し、日常に浸透するテクノロジーの中に潜む隔たりを体感的に問いかけています。 今回、Webサイトをトピックとして選んだ理由は、非常に幅広く、年代やトピックを問わずに多種多様なものが存在しているからです。世界ではほぼ無限とも言える数のWebサイトが作られており、自主的にも調査しやすい媒体です。また、あるターゲットをもとにしたWebサイトのデザインやアニメーション、構成などは全てコーディングによって作られるため、主観的な要素でもそのコードを通じて客観的に分析できるという利点があります。例えば、フライヤーやポスターのような物理的な媒体では、データへの変換は容易ではないため、そのデザインや内容を分析することは難しいかもしれません。しかし、Webサイトであれば、簡単に膨大なデータを収集でき、かつ先ほど述べたような客観的な分析が可能です。今回の調査では、Webサイトのスクリーンショットなどの画像ではなく、URLをデータとして使用したことで、効率的にデータを集められました。Webサイトの解析は、URLを指定すると、それをAIが認識・解析する形になっています。AIは文字認識や画像認識を通じてデータを処理し、内容やデザイン、ターゲット層の特性を考慮し、私たちの考案したプロンプトを用いて、「女らしさ」「男らしさ」をスコアリングさせました。「スコア」という言葉を使っているのは、展示では表示していませんが、数値データを出させているためです。 今回使用した大規模言語モデル(LLM)は、ChatGPT、Gemini、Perplexityの3つです。この3つのLLMにはそれぞれの特性があり、ChatGPTでは女らしさ/男らしさに対して非常に高いスコア(90点など)が出やすい一方、Geminiは50点から80点程度の範囲内で結果を出す傾向があり、より安定したスコアを示しました。Perplexityはさらにニュートラルな結果を目指しているのが特徴です。…
Tech Biasイベントレポート記事_ピックアップ
2025/01/23

インクルーシブな対話や実践はどのように生まれる? デザインとアートの両面から|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』トークイベント:第2部レポート

インクルーシブな対話や実践はどのように生まれる? デザインとアートの両面から|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』トークイベント:第2部レポート 東京大学とソニーグループ株式会社による「越境的未来共創社会連携講座(通称:Creative Futurists Initiative、以下CFI)」では、10ヶ月間にわたる講座内の実践研究プロジェクトの成果発表展として、2024年11月23~25日の3日間、東京大学本郷キャンパスにおいて、テクノロジーを取り巻くバイアス「Tech Bias(テックバイアス)」をテーマにした展示を開催しました。その関連イベントとして行われたトークの第二部では、ソニーグループ株式会社 サステナビリティ推進部 アクセシビリティ&インクルージョングループ ゼネラルマネジャーの西川文氏とアーティストの布施琳太郎氏を迎え、西川氏の取り組むインクルーシブデザインというキーワードを軸にしながら、テクノロジーとともにバイアスを解決していくプロセスあるいは付き合い方について意見が交わされました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Kaori Nishida PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 制約からの発想が新たな価値をもたらす 容易につながる社会で孤独や二人の在り方を表現する 自分ごと化から本質的な課題をあぶり出す 強制的イノベーションの仕組みと思考力 異なる誰かの立場に立つのは暴力的?…
Tech Biasイベントレポート
2025/01/23

潜在的なテクノロジー×バイアスの自覚から次の探求へのバトンをつなぐ|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』トークイベント:第1部レポート

潜在的なテクノロジー×バイアスの自覚から次の探求へのバトンをつなぐ|『TECH BIAS -テクノロジーはバイアスを解決できるのか?』トークイベント:第1部レポート 東京大学とソニーグループ株式会社による「越境的未来共創社会連携講座(通称:Creative Futurists Initiative、以下CFI)」では、10ヶ月間にわたる講座内の実践研究プロジェクトの成果発表展として、2024年11月23~25日の3日間、東京大学本郷キャンパスにおいて、テクノロジーを取り巻くバイアス「Tech Bias(テックバイアス)」をテーマにした展示を開催しました。その関連イベントとして行われたトークの第一部では、東大×ソニー混合メンバーで構成された4グループによる作品のプレゼンテーションを行いました。それぞれの研究領域や実装スキルなどのバックグラウンドを掛け合わせながら、普段の活動とは異なる領域横断的なアプローチを通じて制作された作品やプロトタイプたちは、いずれも社会に潜在するバイアスを明らかにし、対話の解像度を深めるものとなりました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Kaori Nishida PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 「越境」で新たな価値や問題に創造的に取り組む 本当の当事者は誰なのか? 社会モデルから問う テクノロジーは人間のステレオタイプの集積? 数値化できないありのままの多様性を見つめる 動物のイメージとAIの失敗がもたらす気づき 異なる居心地の悪さが生むイノベーション 「越境」で新たな価値や問題に創造的に取り組む筧:まず私の方から概要を説明した上で、グループのみなさんにプレゼンテーションを始めてもらおうと思います。2023年の12月に東京大学情報学環とソニーグループ株式会社が連携する形で「Creative Futurists…
CFD_関係者向け
2025/01/23

AI x Creators:Pushing Creative Abilities to the Next Level — 4つのステップで考えるAIと音楽クリエイションの関係|CFD-007:光藤祐基

AI x Creators:Pushing Creative Abilities to the Next Level — 4つのステップで考えるAIと音楽クリエイションの関係|CFD-007:光藤祐基 東京大学とソニーグループが共同で運営するCreative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、異なる領域を越えて未来の共創をリードする方々を迎える対話の場「Creative Futurists Dialogues」シリーズ(以下CFD)を展開しています。第7回目のゲストはSony AIのCorporate Distinguished Engineer、光藤祐基さんです。 光藤さんは、AIが音楽クリエイションにどのように活用されるかを四つのステップに分けて解説し、AIとクリエイターの関係について具体的な事例を交えながら紹介しました。また、クリエイターの表現力を引き上げるために必要な要素についてもレクチャーしていただきました。後半では、4ステップ全てを網羅したユースケースの紹介と、AIからクリエイターを守る方法について議論しました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Haruna Mori PHOTOGRAPH: Yasuaki…
CFD_関係者向け
2025/01/07

アートの創作プロセスにおける外界・認知・身体の相互作用|CFD006(後編):高木紀久子(東京大学大学院)

アートの創作プロセスにおける外界・認知・身体の相互作用|CFD006(後編):高木紀久子(東京大学大学院) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第6回目のゲストは、美術家として活動後、認知科学・認知心理学領域へと進み、特に芸術家の創作プロセスと芸術創作の教育支援について実践的な研究に従事するという、越境的な経歴を持つ高木紀久子氏です。後半では、参加者らはフロッタージュとフレーミングのワークを通じて、環境に対する身体の使い方やものの見方について、アーティストの探索活動の体験から創作プロセスにおける認知の作用を実感してもらいました。前編はこちら。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 偶然の出会いを「類推」と「驚き」で活用する 目に見えないテクスチャを認知レベルで掴みとる 自己の探索とその作用に意識的になる 創造性プロセスの他領域への展開の可能性 偶然の出会いを「類推」と「驚き」で活用する高木紀久子(以下、高木):これから紹介する研究は、アーティストの篠原猛史さんによる「behind the scene アート創作の舞台裏」という東大の駒場博物館での展示の研究です。約11ヶ月にわたった発話のインタビュー結果、ドローイングの写真、写真を使ってアイデアを探索している様子を分析しました。 この展覧会は、彼がデュシャンの作品を観たいというところから始まっているのですが、会場は、デュシャンの代表作のひとつである『大ガラス』のレプリカがあるということで有名な美術館です。…
高木紀久子
CFD_関係者向け
2025/01/07

認知科学でアートの創造プロセスを探究する|CFD006(前編):高木紀久子(東京大学大学院)

認知科学でアートの創造プロセスを探究する|CFD006(前編):高木紀久子(東京大学大学院) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第6回目のゲストは、美術家として活動後、認知科学・認知心理学領域へと進み、特に芸術家の創作プロセスと芸術創作の教育支援について実践的な研究に従事するという、越境的な経歴を持つ高木紀久子氏です。アートから情報デザイン、認知科学の道へとグラデーションで移り変わっていったその活動の変遷を、領域の時代背景とともにレクチャーしていただきました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 創作者から研究者へ。アートとサイエンスの認知学の変遷 社会、技術の進化とともに新しい知を創造する現代美術の複雑さ 熟達したアーティストはいかにコンセプトを設定しているのか ものを見るための目の構造と無意識のふるまい ものを見るための目の構造と無意識のふるまい筧康明(以下、筧):Creative Futurists Dialoguesの第6回目を始めます。お集まりいただきありがとうございます。今日のゲストは高木紀久子先生です。美術家でありながら、認知科学・認知心理学、創造性の研究者でもあり、芸術創造連携機構の特任助教も務めていらっしゃいます。今日はアーティストの創造プロセスについてお話しいただき、間にワークをしながらそのエッセンスをつかむようなものをご用意いただいています。対話の時間もあるので、皆さんも準備いただければと思います。高木さん、早速ですがよろしくお願いいたします。 高木紀久子(以下、高木):本日は皆様、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。お声掛けいただきました筧先生はじめ、また、このような場を設けていただいたCFIの皆様もどうもありがとうございます。今日の流れといたしましては、まず簡単に私のプロフィールをご紹介して、代表的な研究の話を二本ご説明します。その後、実際にアーティストの創作プロセスを体感するワークをして、その内容をお互いにシェアしてもらいます。最後に、全体のディスカッションをして、クロージングとさせていただきます。 今ご紹介いただいたように、私は認知科学の中では変わり者で、多摩美術大学の絵画科の油画専攻出身です。創作を通じて自分の手を動かしながら感じた概念を生成する過程に興味を持ちました。また、仕事を通じても、デジタル表現、例えばSIGGRAPHで調査をするなど、アートとサイエンスの合間の研究に関わり、人の認知へと興味関心が進みました。…
樋口恭介
CFD_関係者向け
2024/12/20

マルチモーダルな技術社会で問う言語表現の彼方|CFD005(後編):樋口恭介(SF作家)

マルチモーダルな技術社会で問う言語表現の彼方|CFD005(後編):樋口恭介(SF作家) 東京大学×ソニーグループによる、Creative Futurists Initiative(以下CFI、越境的未来共創社会連携講座)は、領域を越境し、未来へ向けた共創を先導する方々を迎える対話の場、Creative Futurists Dialoguesシリーズ(以下CFD)を展開しています。第5回目は、SF作家の樋口恭介氏をゲストにお招きし、「大規模言語モデル(LLM)」や「マルチモーダル」といった近年急激に普及したキーワードを掲げ、参加型レクチャーが行われました。対話の後半では、人間視点から捉えられてきた認知を改めて広い視点から捉え直し、言語表現のもつ特性やその解釈が及ぼす他者との越境の可能性について言及されました。前編はこちら。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Nanami Sudo PHOTOGRAPH: Yasuaki Kakehi Laboratory PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: 視覚表現での意思疎通へ向かう“人間らしい”マルチモーダルAI AIの書く文章を人は見抜けるのか サウンドへ介在する言語的解釈 分散化した声がアンコントローラブルに重なり合う 視覚表現での意思疎通へ向かう“人間らしい”マルチモーダルAI 筧康明(以下、筧): マルチモーダルについて、皆さんが普段からどれくらい関心を持っているのか気になっています。僕はインターフェースの研究をしているので、音声や画像、映像、さらには触覚や香りまでもを操るために、マルチモーダルやクロスモーダルについて考えることが多いです。ただ、今立ち上がっているマルチモーダルに対する関心が、その延長線上にあるものなのか、それとも全く異なる新しい現象なのかを聞きたいです。 渡邉英徳(情報学環)(以下、渡邉): 僕自身の問題意識としては、LLM自身の精度向上へ行くよりも前に、マルチモーダルの方が優先事項として挙げられて、プロンプトをテキストで書くのではなく、画像や映像の処理の方が盛り上がっていることが興味深いと思っています。その上で、それがマルチモーダルとして、暗黙の共通理解が得られているという状況が面白いと感じます。つまり、LLMが本来持っている言語的な姿勢に対して、画像や映像も読み込めるということが全く別の問題として、ある種人間らしくこしらえられているというふうに見ることもできます。…