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CFI Kickoff Symposiumイベントレポート
2024/02/22

世紀を超えたコラボレーションを実現する|渡邉英徳

世紀を超えたコラボレーションを実現する|渡邉英徳 文理融合の研究と、アートやデザインなどの表現を実践する大学院、情報学環を中心とする東京大学、および「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」を存在意義に掲げるソニーグループが連携し「越境的未来共創社会連携講座」(通称: Creative Futurists Initiative)をスタートさせました。同講座は社会を批判的に読み解き、アートとデザイン、そして工学のアプローチによって問題提起・課題解決を行う人材を育成することを目的としています。 2024年2月22日(木) に東京大学情報学環・福武ホールで開催された同講座の設立記念シンポジウムで、渡邉英徳(東京大学 大学院情報学環教授)が講座設立の挨拶をしました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Akihiko Mori PHOTOGRAPH: Timothée Lambrecq PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.僕らの研究室でやっているのは、筧先生からもご説明がありましたが、戦争や自然災害で蓄積されてきた貴重な記憶をデジタルマップを使って可視化することを行ってきました。今見ていただいてるのは、広島の原爆をテーマにした「ヒロシマ・アーカイブ」です。直近の成果でいうと、テレビ等でも広く紹介されたのでご存じの方も多いと思いますが、ウクライナ戦争で破壊された建物のデータを地元のクリエイターの方々とコラボレーションしながら収集していき、3Dのマップにする「ウクライナ衛星画像マップ」プロジェクトを行いました。あと今年は能登半島地震のときにどのような被害が生じたのかを、民間の3Dクリエイターの方とコラボレーションして、発災から2日後だったと思いますが、素早く発信することができました(能登半島地震フォトグラメトリ・マップ)。最終的にはNHKとコラボレーションしながら、どのように被害が生じ、これからどんな支援が必要なのかを明らかにする、といった仕事をしてきました。こちらは、モノクロの写真をカラー化してSNSでシェアしたり、展覧会を開くことで、過去に封じられていた記憶がよみがえるというようなプロジェクトを進めています(『記憶の解凍』プロジェクト)。学生さんとの関わりでいうと、ノーコード、プログラミング不要のプラットフォームを使って、学生さんたちが自分たちの選んだテーマで、災害のデジタルアーカイブという授業を東大の1、2年生相手にやっています。あとは、研究室の学生さんでこの講座にも参加する予定ですが、この番組ではこの3人がフィーチャーされましたが、それぞれの切り口でどんなふうに記憶を継承するか、という活動を展開しています。特に紹介したいのがこちらですね。見たことある人が歩いています。今日はたまたま同じ服を着ています。アバターを使って昔の写真の中を体験できるシステム「戦災VR・古写真VR」です。非常に面白く、それまでに見えていた写真が空間だということに気づくことができます。子供たちも戦争体験者の方も、このシステムを非常に好意的に受け止めてくれています。僕はゲームの全盛期の20世紀に、ソニーにいました。このときに手がけたゲームが『アディのおくりもの』です。女の子が2次元の水彩画の中を歩くというシステムです。さっきの学生さんの作品で、写真の中をアバターが歩いていましたが、それの20世紀バージョンをソニーのときに作っていたのです。さらに、さきほど見ていただいていたシステムは、ソニーのときの同僚の方が起業したアバターの会社とコラボしていたりします。なので、僕がこの講座で期待しているのは、世紀を超えた、しかも立場や社会的な属性を超えたコラボレーションを学生さんと一緒に展開していくようなことです。
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2024/02/22

テクノロジーとの共生における羅針盤としての人文・社会科学|田中東子

テクノロジーとの共生における羅針盤としての人文・社会科学|田中東子 文理融合の研究と、アートやデザインなどの表現を実践する大学院、情報学環を中心とする東京大学、および「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」を存在意義に掲げるソニーグループが連携し「越境的未来共創社会連携講座」(通称: Creative Futurists Initiative)をスタートさせました。同講座は社会を批判的に読み解き、アートとデザイン、そして工学のアプローチによって問題提起・課題解決を行う人材を育成することを目的としています。 2024年2月22日(木) に東京大学情報学環・福武ホールで開催された同講座の設立記念シンポジウムで、田中東子(東京大学 大学院情報学環教授)が関連活動の紹介をしました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Akihiko Mori PHOTOGRAPH: Timothée Lambrecq PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.大きな理念につきましては、今筧先生からとても丁寧に説明いただきましたので、実際に既に走り出しているプロジェクトについて説明をさせていただきたいと思います。私、今ご紹介いただきました東京大学大学院情報学環の田中東子と申します。 まだ東大に来て2年目です。長年、女子大学で、どちらかというと中規模の学校でグループワークをしながらの教育や、アクティブラーニングなどを数多く行い、今はこちらでまた少し違った形で教育活動に携わらせていただいております。私たちが既に始めている「テック✖バイアスプロジェクト」というものがありますので、今日はこちらのお話を簡単にさせていただきたいと思います。プロジェクト概要としましては、テクノロジーの開発時、実装の際にブラインドスポットとなりうるバイアスについて、特に初年度はジェンダーやセクシュアリティといった観点から様々な専門分野の参加者が文理融合の多様な視点から検証し、その改善や解決に向けて具体的な制作物を共創することを通じ、あるべき未来を具体的に構想してみるというプロジェクトです。人文学の学生、社会学の学生、社会科学の学生、理工系の学生、そしてソニーの社員の方も一緒にグループとしてこのプロジェクトに参画していただけます。プロジェクトのプロセスでは、例えば対話・討論をする時には、喧嘩するようなこともあるかもしれないし、考えが一致せず、矛盾を引き起こすようなこともあるかもしれません。そして、制作のプロセス、それらすべてを記録し、エスノグラフィー調査の対象とし、多様な集団が協働するときに何が起こり、何が問題となり、それらがどのように解決される、もしくは解決されないまま放置されていくのか。そういったことを分析の対象にしていく形でプロジェクトを進めています。 そして、社会学や人類学的なフィールドワークを経験したことがある人は、今回のプロジェクトを通じてデザインや制作の手法を学び、逆にデザインや工学の経験者はフィールドワークの手法をともに学んでいこうと、現在は相互交流を深めているところです。そして最終的な成果物として考えているところにお話が移りますが、まずはテック✖バイアスに関する課題解決型のデザインや制作物です。こういったものを作成しまして、国内外の展示会などにも出すことを目標に、現在取り組んでおります。 それから物理的な制作物ではありませんが、価値観や教育上の取り組みとしては、システム領域への多様な価値観の導入と埋め込みというものを、プロジェクトを通じてどのように行っていくことができるか、ということを考えてみたいと思っています。そして、企業・産業的な視点と学術的視点を融合させ、対峙しながら、どのように課題や問題に取り組んでいけるのか、ということも考えていきたいと思います。そして調査分析型の課題解決方法と、デザイン思考を融合させた新しい教育スタイルというものを、プロジェクトを通じて方法論的に抽出し、今後の情報学環や、ソニーの社員の方の教育活動などに応用していくというようなことを考えています。初回も既にグループワークを行っており、『ラボラトリーライフ』という社会学の研究者が理系の実験室に入り込み、そこで何が起きているかをフィールドワークした、世界的に有名な本を読みました。こういった本を読みながら、理系・文系、学生・社会人の方、日本人の学生、留学生ほかさまざまな属性の方々がディスカッションをしていくということを進めております。あとは参考資料になるので、また後で詳しく話しますが、非常にメンバーが多様であるということ。とても楽しそうに、学生さんが、そしてソニーの方が参加してくださっています。またこの先、どんなふうに進めていくかは、この後のパネルディスカッションなどを通じ、もう少し詳しく説明させていただければと思います。
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2024/02/22

批判、創造、そして共創する「Creative Futurists」がここで生まれる|筧康明

批判、創造、そして共創する「Creative Futurists」がここで生まれる|筧康明 文理融合の研究と、アートやデザインなどの表現を実践する大学院、情報学環を中心とする東京大学、および「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」を存在意義に掲げるソニーグループが連携し「越境的未来共創社会連携講座」(通称: Creative Futurists Initiative)をスタートさせました。同講座は社会を批判的に読み解き、アートとデザイン、そして工学のアプローチによって問題提起・課題解決を行う人材を育成することを目的としています。 2024年2月22日(木) に東京大学情報学環・福武ホールで開催された同講座の設立記念シンポジウムで、筧康明(東京大学 大学院情報学環教授)が講座概要の紹介を話しました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Akihiko Mori PHOTOGRAPH: Timothée Lambrecq PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.目次: XLabの取り組み 越境的未来共創社会連携講座設立の経緯と目標 越境的未来共創社会連携講座の活動について 最初に私の方から、この社会連携講座について概要をお話したいと思います。 若干の教員とソニーのメンバーによってどんなコラボレーションが可能かというディスカッションから始めさせていただきたいと思います。今日はキックオフなので、何かここで成果として出せるものはないのですが、どんな人たちが関わるのか、どんなことに関心があるかを共有することで、ここに集まってる皆さんと一緒に活動していく種を見つけたいと思っています。越境的未来共創社会連携講座、Transboundary Co-creation for…
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2024/02/22

ソニーグループと情報学環が生み出すダイナミズム|住山アラン

ソニーグループと情報学環が生み出すダイナミズム|住山アラン 文理融合の研究と、アートやデザインなどの表現を実践する大学院、情報学環を中心とする東京大学、および「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」を存在意義に掲げるソニーグループが連携し「越境的未来共創社会連携講座」(通称: Creative Futurists Initiative)をスタートさせました。同講座は社会を批判的に読み解き、アートとデザイン、そして工学のアプローチによって問題提起・課題解決を行う人材を育成することを目的としています。 2024年2月22日(木) に東京大学情報学環・福武ホールで開催された同講座の設立記念シンポジウムで、住山アラン(ソニーグループ株式会社 コーポレートテクノロジー戦略部門 部門長)が講座設立の挨拶をしました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Akihiko Mori PHOTOGRAPH: Timothée Lambrecq PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.ソニーグループの住山と申します。本日はよろしくお願いします。皆様、本日は本当にお忙しい中、境的未来共創社会連携講座の開設を祝したこのイベントにご参加いただきましてありがとうございます。 東京大学とソニーグループではこれまで非常に多くの連携プログラムや寄付講座、社会連携講座を一緒に運営してきました。今回も特に東京大学大学院情報学環とともに境的未来共創社会連携講座、通称 Creative Futurists Initiativeを始動できることを、ソニーグループを代表して大変嬉しく思います。どうもありがとうございます。 このタイミングでどうしてこのような講座なのかということですが、皆さんがご存じのように、現在の社会環境の情勢変化は非常に激しいです。これまでの知見や経験などの延長線上で解決できるような課題が少なく、前例がないような課題が非常に多くなってきています。こうした課題に対応する上で、単一的なアプローチではなく、社会課題、技術、アートのアプローチを複合的に採り入れ、通常のアプローチでは手に負えないような未来課題へ対応していく技能や感覚を養い、人類および社会課題の解決や未来に向けての問題提起に取り組む。そういった未来に通用する人材の育成はますます大事になってきています。そういったことを目的に、今回東京大学と協力してこの講座を設置することになりました。 今回のユニークな点は、大きく3つあると思っています。従来の企業と大学との関係はどちらかというと大学の研究室と企業の研究室など、一対一の関係が多かったと思います。しかし今回は情報学環という非常に大きな、また文理融合した、学際的な領域から新しいフロンティアを創造するというミッションを持った学部とソニーグループによる連携です。ソニーグループはエレクトロニクス、半導体、エンターテインメント、金融など非常に幅広く事業を行っていますので、非常にワイドでダイナミックな連携が生まれてくると思っていますというのが1つ。 2つ目が、この講座がハブとなって、学内・学外における多様な才能と人的・知的資源による集合的な創造、「コレクティブクリエイティビティ」ですね。1人のクリエイティビティだけではなく、皆さんが集まって活動することを目指します。最後の3つ目、そういったことで得られた知見、特にコレクティブクリエイティビティに関しては、そのプロセス自体も新しい取り組みになりますので、そういったことを社会に還元していく、共有していくということを目指しています。
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2024/02/22

人文・社会学、理工学そしてアート・デザインが織りなす新たな知|山内祐平

人文・社会学、理工学そしてアート・デザインが織りなす新たな知|山内祐平 文理融合の研究と、アートやデザインなどの表現を実践する大学院、情報学環を中心とする東京大学、および「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」を存在意義に掲げるソニーグループが連携し「越境的未来共創社会連携講座」(通称: Creative Futurists Initiative)をスタートさせました。同講座は社会を批判的に読み解き、アートとデザイン、そして工学のアプローチによって問題提起・課題解決を行う人材を育成することを目的としています。 2024年2月22日(木) に東京大学情報学環・福武ホールで開催された同講座の設立記念シンポジウムで、山内祐平(東京大学 大学院情報学環・学際情報学府 情報学環長・学際情報学府長)が講座設立の挨拶をしました。(※) 記事中の所属・役職等は取材当時のものTEXT: Akihiko Mori PHOTOGRAPH: Timothée Lambrecq PRODUCTION: VOLOCITEE Inc.皆さんこんにちは。 東京大学大学院情報学環で学環長をしております山内と申します。本日は多数の皆様にお集まりいただき、良い心から感謝申し上げます。部局長として、ソニーグループのご支援のもと設置されたこの社会連携講座の開始にあたり、挨拶をさせていただきます。 東京大学大学院情報学環学際情報学府は、情報に関して学際的な教育研究を行うために2000年に設立されました。文理を越境するこの大学院は、情報の研究を既存の枠組みを超えて推進し、新たな知の創出を目指しています。かつての情報研究は、各学問領域で独立して行われ、その分析対象や方法論も多岐にわたっていました。 しかし、情報学環では、これらの学問領域を有機的に結びつけることで、学際的な研究の可能性を広げています。越境的未来共創社会連携講座の立ち上げは、まさに情報学環が追求する学際的なアプローチを体現したものであり、越境的な未来共創を目指す重要な一歩となります。本講座では、人文・社会学、理工学そしてアート・デザインの三つの異なる領域が一体となり新たな学問領域の創造を目指します。この統合により、人文社会学の提供する深い洞察力、工学のもたらす厳密な問題解決能力、そしてアートの開拓する創造性と感受性を学生たちが身につけることができます。これらの能力を統合することで、私達は既存の枠を超えた新しい視点から社会の課題にアプローチし、それに対する革新的な解決策を生み出す力を養うことができるようになります。 今日の社会は、技術の急速な進歩とともに人々の生活様式が大きく変化しています。この変化は、同時に新たな社会の課題を生み出しており、これらに対応するためには従来の単一学問領域の知識だけではなく、多角的な視点と複合的な知識が求められます。 さらにこれらの社会課題に対処するためには、大学がキャンパスに閉じるのではなく、社会と密接に連携し、実際の課題解決に取り組む姿勢が不可欠です。この点で技術開発の最前線で世界をリードするソニーグループとの協力は私たちの研究にとって新たな可能性を開き、社会に対する実践的な後継の道を拓くものです。本日ここに集まった皆様とともに、この新しい講座のスタートを祝うことができ、大変嬉しく思います。私たちの取り組みの成果が、学術と社会にとって有益な貢献に繋がることを心から願っております。皆様のご支援・ご協力に深く感謝するとともに、これからの展開を楽しみにしています。ありがとうございました。
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2024/02/22

「越境的未来共創社会連携講座」設立記念シンポジウム

越境的未来共創社会連携講座の特長を一言でいえば、「越境する教室」であるということに尽きる。つまり、専門的な学問領域を越えた問題提起・課題解決のための手法を学ぶ、一般受講者を対象とした講座だ。大学などの高等教育機関は、専門化された学問を行う。しかし企業としては、学問の枠を超えた知見によって社会課題を読み解き、実践的に課題解決を行いたい。その間に位置し、学問と社会に創造を生むための“教室”だ。